【法人向け】派遣会社の活用するためのメリット・デメリット、注意点を解説
人手不足の深刻化やコロナ禍が進む中、働き方の改革の推進や労働・雇用の多様化が加速し、多くの企業が人材採用や人材配置に悩まされています。
企業が必要としているスキルのある人材を、必要に応じて活用できる人材派遣は、正社員採用に比べて短期間で人手を補充できるため、ニーズが高まっています。
人材派遣会社を利用したいと考えていても、人材派遣についてあまりよくわかっていないという企業も少なくありません。
派遣の基本情報から派遣採用のメリット・デメリット、法律上の注意点などを解説します。
人材派遣の知識
一般的な雇用契約とは異なります。
・派遣労働者(派遣スタッフ・派遣社員) = 派遣会社と雇用契約をし、派遣先にて勤務する労働者
・派遣元企業(派遣会社) = 労働者と雇用契約を締結する会社
・ 派遣先企業(派遣先) = 派遣会社と派遣契約を締結し、派遣労働者に指揮命令を実施する会社
労働者と雇用契約をする派遣会社、そして派遣会社と派遣契約を締結し派遣労働者を受け入れる派遣先企業との三者間の契約です。
特にポイントとなるのは、雇用している企業では無い、派遣として受け入れる派遣先企業が派遣で来た労働者に対して指揮命令を行うことが最大のポイントとなります。
派遣とは
派遣には、大きく分けて、「有期雇用派遣」「無期雇用派遣」「紹介予定派遣」の3種類があります。
『有期雇用派遣』
一般的な人材派遣のことを指します。
企業が必要とする期間だけ人材派遣会社と派遣社員が雇用契約を結ぶことから有期雇用派遣と呼ばれます。
企業と派遣社員には直接の雇用関係はなく、人材派遣会社と派遣契約のもと業務指示を行います。
有期雇用の派遣スタッフは、労働派遣法の派遣受入期間制限の適用を受けます。同一の派遣スタッフを同一の部署で受け入れることができるのは3年までです。
そのため、長期継続することが前提の業務で受け入れることには適していませんが、幅広い登録者から迅速に求めるスキルや経験を持つ人材を紹介してもらえる可能性が高まります。
ただし、以下の場合は、例外として3年を超える労働契約を締結することが認められています。
・高度の専門的知識を有する労働者が、その高度な専門的知識等を必要とする業務に就く場合
・60歳以上の労働者の場合
・一定の事業の完了に必要な期間を定める場合
・産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の業務に派遣する場合
『無期雇用派遣』
無期雇用派遣とは、仕組みは有期雇用派遣と変わりませんが、人材派遣会社と派遣社員が無期雇用契約を結んでいるのが違いです。
派遣スタッフにとっては次の派遣先が決まるまで無給になることがないため、安定した働き方ができるほか、落ち着いてキャリアプランを立てられるのがメリットです。
一方派遣先企業にとっては、一定程度のスキルを保有している人材の派遣が期待できるのをはじめ、中長期的な戦力となる人材を確保できます。
なお、有期雇用から無期雇用の転換もあります。
これは、派遣スタッフのみならず、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)も対象となりあます。
無期転換ルールは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込みにより、
期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。
契約期間が1年の場合、5回目の更新後の1年間に、契約期間が3年の場合、1回目の更新後の3年間に無期転換の申込権が発生します。
有期契約労働者が使用者(企業)に対して無期転換の申込みをした場合、無期労働契約が成立します(使用者は断ることができません)。
『紹介雇用派遣』
派遣元会社が労働者派遣を行う前または後に、職業紹介を行うことをあらかじめ予定して実施される労働派遣の形態です。
したがって、派遣元が紹介予定派遣を行うためには、労働者派遣事業としての許可や届出だけでなく、有料職業紹介事業の許可を受けておく必要があります。
紹介予定派遣は、特に派遣先にとっては大きな活用意義があります。
本来の労働者派遣では禁止されている派遣労働者を特定する行為、すなわち、事前面接や履歴書の事前送付が認められています。
したがって、事前面接や履歴書の事前送付を経たうえで、労働者派遣という雇用形態で業務に従事させて、派遣労働者のスキルや人柄を見極めてから、派遣先の正規社員として迎えることができます。
「注意」派遣スタッフに依頼できない業務
派遣スタッフに依頼できる業務は、派遣元企業と締結している労働者派遣契約で定めた業務内容の範囲のみです。
派遣スタッフに依頼できる業務は、あくまでも契約内容に基づいたものだけということを理解しておくと、トラブルを未然に防ぐことができます。
また、労働者派遣法では、一部の業務について派遣が禁止されています。禁止業務は下記のとおりです。
・港湾運送業務・・・船内荷役、はしけ運送、湾岸荷役、いかだ運送等
・建設業務・・・土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体の作業、またはこれらの準備の作業
・警備業務
・医療関係の業務(紹介予定派遣、社会福祉施設への派遣等を除く)・・・医師、歯科医師、保健師、助産師、看護師、准看護師、管理栄養士、
薬剤師、歯科技工士、歯科衛生士、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士等の業務
・人事労務管理関係のうち、派遣先において団体交渉または労働基準法に規定する協定の締結などのための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務
・弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士の業務(一定の条件で行われる売位を除く)
・建築士事務所の管理建築士の業務
派遣スタッフに依頼したい業務が禁止業務に該当していないか注意しましょう。
派遣を活用することのメリット
まず、人材派遣の3つの形態について、それぞれのメリットと注意点を見ていきましょう。
有期雇用派遣のメリットと注意点
<メリット>
業務量の変動に合わせた契約が可能になります。本来固定費であるはずの人件費を変動費化できる点もメリットの一つです。
最近では、雇用リスクを減らすために、直接採用ではなく、長期の定型業務であっても人材派遣を利用するケースもあります。
人材派遣の場合、人材紹介までのスピードが即日~2週間程度で、業務も早く始められるので、早期の着任を希望する企業には有効です。
<注意点>
依頼内容によっては、ニーズに該当する人材がいない、即戦力の人材確保が難しい場合もあります。また、同じ派遣社員を同一の組織に3年以上派遣することができないので、長期に派遣することに対応できません。
有期雇用の場合は、派遣の採用をする際に面接ができない、契約の際に事前に提示した内容の業務しか依頼できないことも覚えておきましょう。
無期雇用派遣のメリットと注意点
<メリット>
最大のメリットは、労働者派遣法の個人期間制限がなくなるので、同じ派遣社員を長期に受け入れることが可能です。
無期雇用派遣の場合でも、企業との契約はあくまでも有期となります。上記の有期雇用派遣と同様、業務量の変動に合わせた契約が可能になるメリットもあります。また、派遣元が無期雇用していることから、派遣社員の定着やスキル取得におけるモチベーションが高い傾向にあります。
<注意点>
有期雇用派遣に比べると、コストが高くなりますが、安定して派遣社員を受け入れることができます。
無期雇用という特性上、定着率やスキルの高い派遣社員が多いですが、必ずしも有期雇用派遣よりも派遣社員の能力が優れているとは言い切れません。有期・無期の仕組みを理解して、長期でのスキルの習熟が必要なのかなど、しっかりと業務内容を見極めたうえで活用するようにしましょう。
紹介予定派遣のメリットと注意点
<メリット>
紹介予定派遣は、最初から直接採用を目指すものなので、上記の2つとは目的が違います。
実際に勤務している状況から、採用するかしないかの判断をできることが最大のメリットです。
このサービスを利用することで、採用後のミスマッチを防ぎます。雇用する側もされる側もお互い何か月か試せて、企業は採用リスクを軽減できます。採用力が弱い会社でも入社してもらえる可能性がアップします。
<注意点>
直接雇用の前に派遣として就業するので、コストがかかります。
紹介予定派遣は、求職者のカテゴリーですでに離職した方が対象となり、在職中に転職活動をする層とは性質が異なります。また、収入や待遇など雇用条件について、最初にしっかりと条件提示を行っておかないと、後でトラブルになる可能性もあるので、注意しましょう。
次に、派遣会社に依頼するメリット・デメリットをみていきましょう。
<メリット>
・繁忙期だけ人材が必要
・プロジェクトの遂行時だけ人材が必要
・突然の退職者が生じた際の欠員補充
・短期間だけ人材が必要
・プロジェクトの期間だけ必要
・育児休業中の社員が復帰するまでの代替要員
・スペシャリスト
・一定のスキルを持った人材
・接客マナーが行き届いた人材
・募集・採用コストの軽減
・教育訓練コストの軽減
・社会保険料等の軽減
<デメリット>
・会社に対する忠誠心が希薄
・決まった仕事ばかりに従事
・正社員と意思疎通が困難
・社内機密の漏洩の恐れ
派遣会社に依頼する際は、業務効率・生産性のアップや必要な時に、必要な期間、必要な人材を確保することができます。また、募集や採用、社会保険料等の軽減にもつながるというメリットもあります。しかし、派遣スタッフは原則として決められた仕事だけに従事するため、ちょっとした頼み事がしづらく、正社員との意思疎通がうまくいかないケースなどもあります。さらに、社内機密や情報が外部に漏れてしまうリスクもないわけではありません。
したがって、人材派遣を活用する際には、労務コストと外部スタッフ活用リスクバランスを考慮する必要があるといえます。
人材派遣を利用する際の一般的な流れ
人材派遣を利用する際の一般的な流れをご説明します。
・派遣社員の就業条件を定める
派遣社員にどのような条件下で就業してもらうのかを定めておく必要があります。
業務内容や派遣期間、就業開始・終了時刻、休憩時間、就業日などを具体的に定めるだけではなく、「人柄」「性格」などといったソフト面も決めておくとミスマッチが防げます。
・派遣会社の選定
実績や拠点、対応職種、派遣会社のカラーまでしっかり見極めましょう。
・派遣会社に依頼
派遣会を選定したら、派遣会社に依頼します。
窓口の営業担当に、募集の背景や就業条件、業務内容、希望する人材などを詳細に伝えましょう。
・マッチング
派遣会社のほうでスキルや条件に合った派遣スタッフを選定し、紹介します。
派遣会社の営業担当と派遣社員での顔合わせを行うことが多いです。
・派遣契約後、受け入れスタート
派遣スタッフが決定したら、派遣会社と契約を締結します。
まとめ
ここまで、派遣の基本情報から派遣採用のメリット・デメリット、法律上の注意点などを解説してきました。
人材派遣は人材不足や採用活動の効率化に有効です。有期雇用だけではなく、無期雇用や紹介予定派遣など、自社シチュエーションにあった採用方法を検討・採用できる点もメリットです。
人材の採用が必要になった際には、人材派遣サービスをぜひ検討してみてください。